C通信89 月のウサギが荒野を駆ける The Moon Rabbit Runs in the Wilderness

 月にウサギがいる、という伝説は探査船が着陸する今となってはあまい夢物語でしかない。月のでこぼこは宇宙からの隕石衝突の痕であり、そこが死の世界であることをかたちで示している。もしもそこにウサギがいたら、降り注ぐ隕石の嵐のなかを逃げ惑ったであろうし、そもそもそれは生物の誕生以前の話であり、いきなりウサギがそこにいるはずもない。  それでもウサギは存在する。死の世界ゆえにウサギは存在する。月にウサギの影があるのだからウサギは現実に存在するのだ。  宇宙のはるかかなたには超新星の…

C通信88 月面上空のオリヅル号 Orizuru over the surface of the Moon

 宇宙船オリヅル号は月の上空にいる。死者が操縦する宇宙船は月でウサギを探すためにやってきた。  最初の宇宙飛行士たちの足跡は1000万年はそのままの姿で残されるはずだ。つぎの宇宙飛行士や着陸船がそれを吹き飛ばさない限り・・・しかし最初の足跡自体が40億年前からある月面に変更を加えたのだ。

C通信87 放散虫と石 Radiolaria and Stone

 アセファールは石になることを実行に移す。ヒントになったのは放散虫とチャートの関係である。放散虫は小さなアメーバ状の体のなかに、二酸化珪素(=SiO2)の骨格を持つ原生生物で、死んだあとに海底に堆積した骨格が長い年月を経てチャートになる。カルシウムではなくガラスの骨格なのだ。チャートの主成分は二酸化珪素で、石英と同じく無色透明だが、含まれる不純物によって色が変わる。よく見られる赤いチャートは鉄分によってその赤色を得る。  アセファールが注目するのは放散虫の堆積速度である。無…

C通信  COVID-19 TRANSMISSION DRAWINGS  Exhibition          

コロナのパンデミックとともに始まったC通信がNo.83で完了し、その展示をすることになりました。サイトではすでに「C通信」としてアップしているものですが、約150点のドローイングと39000字のテキストからなり、会場では冊子とインデックスによって全体を見ることができます。展覧会詳細はこのサイトのNEWS、または GALLERY MoMo のサイトから。 《C通信ドローイング》の構造について 山本和弘  長沢秀之の《C通信ドローイング》の第一の特質は、焦点のボケた画像であるこ…

C通信46 がらんどう Mr.U and the empty eyes

そこの人たちの眼はがらんどうで、そこから向こうの海の風景が見えた。 The eyes of the people there were blank, and from there I could see the seascape beyond.

C通信83. STONE

C通信

石に意思はあるのだろうか?アセファールの石は10万年後に向かって、その意味は消えていくがその存在は残る。アセファールの石の顔には目が3つあり、口がふたつあるように見える。だがそれはあまりにも人間的な見方であって、石とは関係ない。 生物には意思があり、無生物にはそれがない、というのは誤りだ。片方は自らをコピーし生物とされ、一方はコピーできないので無生物とされる。しか両者は別の論理で存在しているから、人間の論理で分ければ生物、無生物となるがこれはあくまでも人間の論理。暗黒物質が…