C通信  C-TRANSMISSION DRAWINGS  Exhibition          

コロナのパンデミックとともに始まったC通信がNo.83で完了し、その展示をすることになりました。サイトではすでに「C通信」としてアップしているものですが、約150点のドローイングと39000字のテキストからなり、会場では冊子とインデックスによって全体を見ることができます。展覧会詳細はこのサイトのNEWS、または GALLERY MoMo のサイトから。 《C通信ドローイング》の構造について 山本和弘  長沢秀之の《C通信ドローイング》の第一の特質は、焦点のボケた画像であるこ…

カタログテキストー「未来の幽霊」長沢秀之

カタログテキスト

 「未来の幽霊」 長沢秀之 写真の父と母。26歳の母も28歳の父も現在の私より若い。二人のまなざしは、初老になった現在の私を見ている。私は自分の子どものような年齢の母と父にまなざしを注ぐ。時間が逆転する。同じ写真の6歳の私が現在の私を見ている。私がその6歳の私を見つめ返す。彼の目に私はどう映っているのだろうか? そのとき、6歳の私が見ていたものが私に送られてくる。土間に立つ母の影、玄関の樫の木の脇の丸い石、その下のコオロギの震え、隙間の多い板塀から見える遠くの景色・・・絵の…

長沢秀之 水彩画集『ぼんやりくっきり』

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俵屋宗達と本阿弥光悦による「蓮下絵百人一首和歌巻」という江戸時代の名品がある。宗達が蓮の葉や蕾、花などを描きそのうえに光悦が小倉百人一首の和歌を書いたものである。ふたりの共同作業による傑作としては「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」がありこれもすばらしいが個人的には前者のほうにある種のすごみを感じる。なにがすごいかといえば、蓮と和歌の文字との距離の絡み合いの妙である。たらしこみによる宗達の蓮の下絵は薄くぼんやりとして宗達独特の絵画空間をつくっているが、光悦の文字は全く逆にその表面にさ…

長沢秀之-無限層の絵画、あるいは豊かな絵画 / 山本和弘

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長沢秀之はいうまでもなくタッチとストロークによるマチエールの画家である。この意味において長沢は"ペイン タリー"を絵画の主調音とするモダニスト・ペインティングの正統な継承者である。だが、このモダニズムの原理主義に留まることなく、長沢は絵画構造の原理 そのものを変革しようとする画家のひとりでもある。宇宙をミクロとマクロとの両面から解明しようとする現代物理学に倣うならば、長沢の絵画には"量子論" 的アプローチと"相対論"…