奄美の対話
12月の半ばに奄美に行った。 「対話」*(註1)の奄美版の可能性を調べるためで、大学の同僚の三澤教授とともにあちらこちらを回ってきた。(三澤さんは今年の夏に「ムサビる!」で学生を引き連れ黒板ジャックを実施、その報道で奄美では知られた存在になっていた。そして次回の可能性の調査のために同行した。) NPO法人アマミーナを主宰する徳雅美さんのすすめによる訪問であったが、案内してくれたのは事務局の森田さんである。元校長先生だけあって奄美のことを知りつくしている。1953年の日本…
12月の半ばに奄美に行った。 「対話」*(註1)の奄美版の可能性を調べるためで、大学の同僚の三澤教授とともにあちらこちらを回ってきた。(三澤さんは今年の夏に「ムサビる!」で学生を引き連れ黒板ジャックを実施、その報道で奄美では知られた存在になっていた。そして次回の可能性の調査のために同行した。) NPO法人アマミーナを主宰する徳雅美さんのすすめによる訪問であったが、案内してくれたのは事務局の森田さんである。元校長先生だけあって奄美のことを知りつくしている。1953年の日本…
「・・・この世界は終わろうとしている」このことばひとつで映画は俄然輝いてくるのだった。映画Le Meraviglie(メラヴィリエ=不思議、奇跡、驚き。ちなみに日本語版題名は「夏をゆく人々」)の主人公の父がテレビに映されたほんの一瞬で言うことばである。そしてエンディング、この父親が主人公のジェルソミーナに買ってきたラクダを映すカメラが一回りする間に、この一家の家は誰も住んでいない廃屋になっている。いや、この物語自体が存在しなかった、あるいはもうとうになくなってしまった物…
モネはジヴェルニーの庭がどのくらい見えていたのだろうか? 今回のモネ展には、1923年に白内障の手術をしたあとの視覚異常を矯正するための眼鏡が展示されているが、ここにリアルな説明が加えられている。そこには「左目のレンズは、左右の眼の見え方の違いから生じる二重像を防ぐため、不透明になっている。右のレンズは手術を行った眼のために少し黄色にしてあり、分厚い凸レンズになっている。黄色は青が強く見える状況を改善し、さらに以前より光をまぶしいと感じる問題を解消してくれるものとなった。」…
他にもたくさんの文とドローイングがあります。たった2日間の展示ですが多くの人に見ていただきたいと思っています。(なおドローイングの下に掲示した文章はキャプション覧の都合上段落が詰めてあることをご了解ください。) また冊子のデザインはデザイナーの大橋麻耶さんにお願いしました。表紙カバーの薄紙を広げると巻頭のドローイングがでてくるつくりとなっています。鉛筆の灰色の質感がうまくでているので会場でお手に取ってご覧ください。
明日8月8日(土)と9日(日)の両日にわたって「ムサビる!」のなかの一環として「対話ー私が生まれたとき・・・」が展示されます。「大きいゴジラ、小さいゴジラ」もここから生まれました。 今回の展示の趣旨文はすでに展示情報にアップしてあるので、ここではそれ以外の文とドローイングを少し紹介します。会場ではふたつの椅子が対峙し、片方にドローイングと手に取って読む文章のコピーがありますが、それは再現できないのでそのセットをここにのせます。 長尾さんは自分が生まれた戦争時のことを書いて…
中国上海の画家、曲豊国さんが訪問教授として武蔵野美術大学の油絵学科に一週間滞在し、講義と指導を行った。2012年の「上海、ムサビる!」で私たちが上海を訪れた際に彼ら上海で活躍するアーティストのスタジオを見せてもらったが、およそ300平米はあるかと思える広い空間で巨大な絵をつくっていたのを思い出す。そのとき曲さんは世界地図のような画面の上に線を施す作品をつくっていたが、最近作はその線での絵づくりは変わらないものの、より複雑な色彩が見えてくる重層的な作品展開になっている(…
国際交流基金のKAKEHASHI Projectで11日間、学生とともにロサンゼルス、プロビデンス、ニューヨークを回ってきた。訪問した美術大学はRISDやPratt Instituteなど4校、その報告は大学ですでにしてしまったのでここでは美術館で感じたことを中心に話を進めたいと思う。 トーマス・デマンドはすでに東京都現代美術館での展示があったから多くの人が知る作家だと思う。紙で克明に現実の場をつくる作家である。この人の作品に「Pacific Sun」という映像作品があ…
芸大美術館での「ダブルインパクト」展とサントリー美術館での「若冲と蕪村」展を見ていると、日本の美術教育は大きな錯誤のもとでなされてきたのだという思いを強く感じる。こちらの勉強不足もあろうが「なぜ、こんなにいい作品をもっと早く見せてくれなかったのか?」という疑問が絶え間なく襲ってくるのだ。 前者の展示は芸大所蔵作品とボストン美術館所蔵作品の“ダブルインパクト”によっているから、そのボストン所蔵品は日頃あまり目にすることはない。しかしこの中に日本美術の本当のすごさを持つ作品…
誤読と誤解を引き出す作品はやはりいい作品なのだ。だからひとつの解釈を受け取るように誘導していないこの映画は、つまりどう解釈してもよく、そのような意味でこの作品はこの上なくいい映画なのだと思う。思わずだれかに書きたくなるような、言いたくなるような、今までのゴダールの映画の中でもとりわけわかりやすい映画なのではないかと思う。 それにしてもゴダールがなぜ3Dなのか?という疑問があるにはあった。それが最初のほうのショットで氷解する。「ググるな・・なんとかかんとか」と言うline…
今年も卒業制作・修了制作の季節がやってきた。学内の展示から印象に残った作品のいくつかをとりあげていきたい。とりあげる作品はどうしても絵画が中心となり、展示会場にあったインスタレーションやパフォーマンス、映像などが少なくなってしまうが、それはこの科の主要な現れとして見ていただきたい。ここではいつも絵を描くことをまず基本におきながらそこから多様な展開を模索してきた経緯がある。そして今年は例年以上に絵画のさまざまな可能性を感じることができた年でもあった。 なかでも強く感じたの…