「我々の脳は、ニューロンの間を電気信号が走ることで思考している。この雲も同じだ。ただ、その伝達手段が神経細胞ではなく、粒子間を飛び交う電磁波だというだけのことだ。粒子ひとつひとつは小さくとも、それらが光速で情報をやり取りし、巨大なネットワークを形成していれば、それは我々の脳を遥かに凌駕する処理能力を持った『思考する雲』になり得るのだ」

「諸君は、生命にはタンパク質や核酸が必要だと思い込んでいる。だが、それは地球という特殊な環境下での偏見にすぎない。重要なのは『情報の複雑な配置』が維持されているかどうかだ。この雲は、自らの粒子の配置を制御することで、記憶を保ち、思考を巡らせている。物質的な組成が何であれ、そこに論理的な構造があるならば、それは生命なのだ」

「この雲にとって、我々人間のような個別の個体は、細胞のひとつにすら見えないかもしれない。彼(雲)は宇宙を旅しながら、星々の情報を収集し、自らの一部としている。彼はひとつの宇宙的な記録装置であり、同時に自律的な思考体なのだ」
テキスト引用は全てフレッド・ホイルの「暗黒星雲」主人公キングスレーの言葉から
