C通信49. 地球外生物 Extraterrestrial

C通信

宇宙人アセファールはかたちをもたない。感情も持たない。記憶ももたない。そして変化する。つまり地球人と交信不可能だ。一応着ぐるみのなかにいて外見上のかたちは保っているが中身のほんとうの姿はわからない。ところがそれは確実に変化する。そのように見せるところがアセファールの最大の能力なのかもしれない。地球人はそれを見て変化ととらえる。変化とは、あるかたちが変化し、はじめのAという文脈がBという文脈に変わることでそこに意味を見つけるからだ。ところがアセファールに意味はない。もともと交…

C通信50.-時間旅行、ほんとうの過去は未来の中に Time Travel

C通信

『ほんとうの過去というものは未来のなかにしかありません。それはうしろではなくまえにあるのです。ですから「記憶にない」ということばは「記憶がない」という病理でもなく、ただ過去を目前に蘇らせたくないだけのことで、つまりは自分の未来を否定し、いまの生を否定していることになるのです。未来とは何でしょうか?たとえば、あなたがカメラを見て微笑んだときのそのまなざし、そのまなざしはたしかに未来の誰かに向けられているのです。はるかなそのとき、あなたは死者としてその誰かの前に現われることでし…

C通信49.-ウチュウジン Extraterrestrial

C通信

私は不死の世界から戻れない。あたりにはパウダー状の乾いた血が絶えず流れている。殺戮が始まった。 アセファールはかたちをもたない。感情も持たない。記憶ももたない。そして変化する。つまり地球人と交信不可能だ。一応着ぐるみのなかにいて外見上のかたちは保っているが中身のほんとうの姿はわからない。ところがそれは確実に変化する。そのように見せるところがアセファールの最大の能力なのかもしれない。地球人はそれを見て変化ととらえる。変化とは、あるかたちが変化し、はじめのAという文脈がBという…

C通信46- Uさんとの邂逅、がらんどうの目 Mr.U and the empty eyes

C通信

そこは半島の突端のようなところだった。崖と浜に挟まれた下り坂の道を進んでいくと上り坂になって町に入るようになっている。ぼくと宇佐美さんはいまスクーターに乗って突端にある町の城塞をめざしているのだ。なぜかというと、その城塞から何人ものひとが空中に浮かび、空のほうに吸い込まれていくのが見えたからだ。ぼくはすでに坂を降りて上り坂にさしかかっていたが、宇佐美さんはまだ下り坂をおりていない。だからぼくの前には宇佐美さんの姿は見えないが、夢のなかでは宇佐美さんがスクーターに乗って走る後…

C通信42.- さかさの波  Wave inversion 

C通信

ようやくそれを登り切ると、目の前には波?…さかさの波のようなものが現われた。 股のぞきをしてみると、たしかにそれは浜に打ち寄せる波だった。 波はくだけ散りながら、さまざまなひとの顔を散らし放った。それらはしぶきから生まれでてくるようにも見えるのだが、じっと見るまもなくすぐに消えてなくなった。これが延々と繰り返された。

C通信41.-こたつのなかの死の山 Dead mountain in KOTATSU

C通信

いつのまにかオレひとりになっていた。天井を這って進んだ友人はもういない。そうしてまたもやひとウサギのあのこたつにたどりつく。そのひとりが手招きをしてこたつに入るように誘った。そこに足を入れた途端、からだがくるりと宙返りして頭からこたつのなかに入ってしまった。 こたつのなかには黒々とした死の山がそびえ立っていた。一艘の小さな舟でその波止場のような所に着くと、上へと延びる階段があり、オレはそこを登った。おかしなことにその階段は登っているのに、落ちていくような、あるいは下がってい…

C通信40.-夢のなかの夢(死者)Dream of the dreamer of the dreamed

C通信

カタカタと機械音がした。もう一度その夢の光景を追おうと眼をつむると、真夜中のがらんとした一室で眠っている自分がいた。その自分が見ているのか、その部屋の窓で起こっていることなのかはっきりしないが、猿たちが音もなく左から右のほうへよぎっていくのが見えた。それはシルエットだけだったから、実際の猿なのか、投影されたものなのか、わからないが、その一瞬の動きが脳に焼き付いたのはたしかだった。 もしかすると向こうにいる猿が自分で、こちらにいるのはその抜け殻かもしれない。