C通信49.-ウチュウジン Extraterrestrial

C通信49.-ウチュウジン Extraterrestrial

2021年2月26日

私は不死の世界から戻れない。あたりにはパウダー状の乾いた血が絶えず流れている。殺戮が始まった。

アセファールはかたちをもたない。感情も持たない。記憶ももたない。そして変化する。つまり地球人と交信不可能だ。一応着ぐるみのなかにいて外見上のかたちは保っているが中身のほんとうの姿はわからない。ところがそれは確実に変化する。そのように見せるところがアセファールの最大の能力なのかもしれない。地球人はそれを見て変化ととらえる。変化とは、あるかたちが変化し、はじめのAという文脈がBという文脈に変わることでそこに意味を見つけるからだ。ところがアセファールに意味はない。もともと交信する意図もないのだ。アセファールは地球人から見たら石か水のようなものだ。それは無生物のようだと地球人は見るが、アセファールから見ればその生物、無生物という意味も無効なのだ。それらは人間の心とは違った“波”をもっている。光とは違った“波”の世界に存在している。地球上でのアセファールの存在をまず感じたのは女性たちだった。男性たちは盲目者や障がい者以外ほとんどがその存在を感じることができなかった。かたちがない上にコミュニケーションがとれないから彼らにはお手上げだったのだろう。そしてそこから生じる恐怖故にアセファールらしき存在を徹底的に抹殺しようとした。それは地球人をも巻き込んだ殺戮へと発展した。多くの死者と言いようのない感情が積もり積もったところでこの殺戮を止めたのも女性たちだった。                                              宇宙人には何をするかわからない恐さのイメージがあるが、アセファールからしたら、人間のほうがよっぽど恐いと言うだろう。人間が一番恐い。ウィルスよりも宇宙人よりも恐ろしいのは人間で、なぜなら同じ人間を平気で殺すから、と言うだろう。殺し方が残虐すぎると言うだろう。動物ならわかるが人間のそれはわからないと言うだろう。しかしアセファールはそうした感情ももたない。地球人が勝手にそう思うだけだ。

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