長沢秀之 水彩画集『ぼんやりくっきり』
俵屋宗達と本阿弥光悦による「蓮下絵百人一首和歌巻」という江戸時代の名品がある。宗達が蓮の葉や蕾、花などを描きそのうえに光悦が小倉百人一首の和歌を書いたものである。ふたりの共同作業による傑作としては「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」がありこれもすばらしいが個人的には前者のほうにある種のすごみを感じる。なにがすごいかといえば、蓮と和歌の文字との距離の絡み合いの妙である。たらしこみによる宗達の蓮の下絵は薄くぼんやりとして宗達独特の絵画空間をつくっているが、光悦の文字は全く逆にその表面にさ…