アセファールは石になることを実行に移す。ヒントになったのは放散虫とチャートの関係である。放散虫は小さなアメーバ状の体のなかに、二酸化珪素(=SiO2)の骨格を持つ原生生物で、死んだあとに海底に堆積した骨格が長い年月を経てチャートになる。カルシウムではなくガラスの骨格なのだ。チャートの主成分は二酸化珪素で、石英と同じく無色透明だが、含まれる不純物によって色が変わる。よく見られる赤いチャートは鉄分によってその赤色を得る。
アセファールが注目するのは放散虫の堆積速度である。無数の放散虫の骨格が堆積して一ミリの石になるには1000年の時間が必要とされる。1センチメートルになるには1万年・・・そうしてその石の細部には、夢でしかありえないような建築、精妙な構造物が化石細片として残される。しかもそれらは肉眼で見られるものでさえなく、顕微鏡でしか見ることができない(1ミリの1/10から1/20ぐらいの大きさ)
アセファール宇宙人は無頭であり、かたちがなく地球では着ぐるみのなかでしか生きられなかった。アセファールは石になることをめざした。そうしてガラスの骨格を閉じ込めたチャートに行き着いた。