きれぎれの言葉、空洞の身体(2018年卒制、修了制作から)

日常

  今年のムサビの卒業制作と修了制作の中から気になった作品をとりあげたい。作品の展示から3週間も経つと、もう記憶が薄れていくのを感じるが、その中でもやはり忘れられない作品もある。そのひとつが中村葵のビデオ作品だ。    スクリーンには作者とおぼしき身体が斜めに大きく映し出されるが、それ自体はあまり動かない。右上の赤い唇だけが頻繁に動き音声=言葉を発しているのだが、その言葉はきれぎれの言葉で通常の人間が話すような言葉ではない。その内容は、かつて自分の町でおきた蜉蝣の大発生につ…

岩崎由実「スチール」

美術関連

油絵研究室スタッフ研究発表展#5「スチール」      岩﨑 由実 | Yumi Iwasaki2017年12/4 (Mon) – 12/14(Thu)   11:00 – 17:00会場:2号館1階FALとてもいい展示になっています。以下、展覧会に寄せた私のコメントです。 油絵の具で絵を描こうとするとき、どうしても突き当たる問題があり、それはその物質性の問題であったり、風土の問題であったりして、そのまま西洋絵画の技法を応用しようとしてもうまくいかない。 岩崎は生キャンバス…

PAINTING 未来の幽霊 [mirainoyurei]動画

美術関連

未来の幽霊ー長沢秀之展 Ghosts of the Future の制作映像をアップしました。(展覧会会場で流れていたもので、画面を回転しながら描く過程を記録し、動画とした。)

未来の幽霊ー長沢秀之展 Ghosts of the Future 会場展示風景

美術関連

 未来の幽霊 会場:一階アトリウムⅠは1980ー1990年代の風景シリーズから、展示室2は対話「私が生まれたとき」(2015年)、対話「私が生まれたとき」奄美編 (2016年)、「心霊教室」(2013年)のドローイングからなる。 二階展示室3は「PAINTING on Painting」(2012年)、「絵画のなかのあらゆる人物は亡霊である」(2014年)、「未来の幽霊」(2017年)からなる。

ごじら考

日常

敗北からの想像力  1954年のゴジラ映画は、戦争に敗北した側からでて来た想像力なのだと思う。もちろんそれは映画にあるように、水爆実験によって古代の巨大生物が蘇ったものとも言えるし、多くの人が指摘するように第二次世界大戦で太平洋に散った日本軍兵士の亡霊と見ることもできる。第五福竜丸に代表されるマグロ漁船が被爆した、その当時の不安の現れでもあろう。  そこから生まれた想像力は戦争に敗北したからこそ生まれてくる独自のものであって、決して勝者の想像ではない。いや、むしろ想像力とは…

カタログテキストー「未来の幽霊」長沢秀之

カタログテキスト

 「未来の幽霊」 長沢秀之 写真の父と母。26歳の母も28歳の父も現在の私より若い。二人のまなざしは、初老になった現在の私を見ている。私は自分の子どものような年齢の母と父にまなざしを注ぐ。時間が逆転する。同じ写真の6歳の私が現在の私を見ている。私がその6歳の私を見つめ返す。彼の目に私はどう映っているのだろうか? そのとき、6歳の私が見ていたものが私に送られてくる。土間に立つ母の影、玄関の樫の木の脇の丸い石、その下のコオロギの震え、隙間の多い板塀から見える遠くの景色・・・絵の…

「未来の幽霊」展

美術関連

 9月の展示が間近。2013年の「心霊教室」、14年の「絵画のなかのあらゆる人物は亡霊である」の延長上に今回の展示がある。展覧会の名前は「未来の幽霊」。  亡霊とは必ずしも過去からのものではない。現在を生きる誰もが未来の幽霊となるだろうし、未来の時間からやって来る幽霊もいる。いやそうした時間の区分け自体が意味をなさないものなのかもしれない。「未来の幽霊」という題は、絵から見えてくる感情を言葉にしたもの。昨年、栃木県美の山本和弘さんにアトリエに来てもらい、作品を見せてテキスト…

Ghosts of the Future

English Text

Hideyuki NAGASAWA – translated by Jaime Humphreys A photo of my parents. Both my mother, who was 26 when the photo was taken, and my father, who was 28, are younger than I am now. Their gaze is turned to me in the present, as I begin to gr…