長澤英俊さんのこと
作品「ゼロ時間」について:長澤 「切った石の切断面はどこにも出ていないんですよ。我々があれを見たときに石の表面しか見えないですね。その裏返しになった世界が蜜蝋なんですよ。あれは反対側に開かれている世界なんですね。あれが閉じると蜜蝋から何から、すべて石の中へ入っていっちゃう、完全に独立した世界になっちゃうということなんです」「だからこれも、空間というよりは時間の問題に入ってくるわけですよ。我々と完全に断絶したもう一個の世界ができちゃうと言う、そういう考えで「ゼロ時間」という…
作品「ゼロ時間」について:長澤 「切った石の切断面はどこにも出ていないんですよ。我々があれを見たときに石の表面しか見えないですね。その裏返しになった世界が蜜蝋なんですよ。あれは反対側に開かれている世界なんですね。あれが閉じると蜜蝋から何から、すべて石の中へ入っていっちゃう、完全に独立した世界になっちゃうということなんです」「だからこれも、空間というよりは時間の問題に入ってくるわけですよ。我々と完全に断絶したもう一個の世界ができちゃうと言う、そういう考えで「ゼロ時間」という…
生者と死者のあわいに生きている。 と言っても息を吸ってまた吐いているのだから、そのあわいとは明らかにまだ生の側にあるようだ。年をとるとはそういう事態を言うのだろう。たとえば夜中、目をつむると種々様々の顔のものたちが目の暗闇に浮かんでくる。それが、たしかにそういう人がいるなという体のものなのだ。逝ってしまった人も出てくるし、まだ見たことも会ったこともない人も出てくる。そういう人たちをじっと見たりしているうちに眠くなって寝てしまう。 昔はこういうことに不安を覚えたと思うが、…
対話「私が生まれたとき」奄美編の展示が始まりました。画像はギャラリーでのフロアトーク(25日(日)午後2時より)の様子です。今回のトークの特徴は、私が作品だけでなく、文章を書いてくれた参加者の皆さんと文字通り対話しながら進めることができたことです。思いがけないことや今まで一度も会ったことがないのに、確かに会ったような気持ちになるなど不思議な体験をしました。 古びた写真に映っている人はこちらを見ています。私たちはそれを見て「あ、これは小さいころの私だね」とか「誰それさんだね…
今年のムサビの卒業制作と修了制作の中から気になった作品をとりあげたい。作品の展示から3週間も経つと、もう記憶が薄れていくのを感じるが、その中でもやはり忘れられない作品もある。そのひとつが中村葵のビデオ作品だ。 スクリーンには作者とおぼしき身体が斜めに大きく映し出されるが、それ自体はあまり動かない。右上の赤い唇だけが頻繁に動き音声=言葉を発しているのだが、その言葉はきれぎれの言葉で通常の人間が話すような言葉ではない。その内容は、かつて自分の町でおきた蜉蝣の大発生につ…
油絵研究室スタッフ研究発表展#5「スチール」 岩﨑 由実 | Yumi Iwasaki2017年12/4 (Mon) – 12/14(Thu) 11:00 – 17:00会場:2号館1階FALとてもいい展示になっています。以下、展覧会に寄せた私のコメントです。 油絵の具で絵を描こうとするとき、どうしても突き当たる問題があり、それはその物質性の問題であったり、風土の問題であったりして、そのまま西洋絵画の技法を応用しようとしてもうまくいかない。 岩崎は生キャンバス…
未来の幽霊ー長沢秀之展 Ghosts of the Future の制作映像をアップしました。(展覧会会場で流れていたもので、画面を回転しながら描く過程を記録し、動画とした。)
未来の幽霊 会場:一階アトリウムⅠは1980ー1990年代の風景シリーズから、展示室2は対話「私が生まれたとき」(2015年)、対話「私が生まれたとき」奄美編 (2016年)、「心霊教室」(2013年)のドローイングからなる。 二階展示室3は「PAINTING on Painting」(2012年)、「絵画のなかのあらゆる人物は亡霊である」(2014年)、「未来の幽霊」(2017年)からなる。
敗北からの想像力 1954年のゴジラ映画は、戦争に敗北した側からでて来た想像力なのだと思う。もちろんそれは映画にあるように、水爆実験によって古代の巨大生物が蘇ったものとも言えるし、多くの人が指摘するように第二次世界大戦で太平洋に散った日本軍兵士の亡霊と見ることもできる。第五福竜丸に代表されるマグロ漁船が被爆した、その当時の不安の現れでもあろう。 そこから生まれた想像力は戦争に敗北したからこそ生まれてくる独自のものであって、決して勝者の想像ではない。いや、むしろ想像力とは…
佐々木敦さん、山本和弘さんの カタログテキストを展示情報にもアップしました。 (下記項目をクリック) カタログテキスト 「視線の幽霊」佐々木 敦 [PDF] 「長沢秀之の新しい絵画についての一考察」 山本和弘 [PDF]