”記憶”とつくること

美術関連

 ①の図は庭に飛んできた百舌(もず)を記憶で描いたものです。私の頭にはその飛んで来た時の、“映像のようなもの”が残っていますがこの絵のような姿はしていません。周囲に木があってその下の枝のさきにもずがとまっていたという“映像のようなもの”があって、描かれた像(イメージ)のようなものではないのです。ところがそれを思い出して描こうとすると、目のところがサングラスみたいになっていたとか、足が短かったとかその見た時の記憶が呼び覚まされ、ひとつの像が出来上がります。それは“映像のような…

山田正亮さんのこと

日常

 待望のアートトレイスプレス第2号が出ました。特集には山田正亮さん、インタヴュー記事として宇佐美圭司さんが載っています。 この数年の間に相次いで鬼籍に入ってしまいましたが、お二人ともにわたしにとっては尊敬する大切な師でした。さきにも書いたように宇佐美さんは大学で10年近く一緒にやってきた同僚でもあり、絵画論をぶつけた師なのですが、山田さんは画廊で知り合った画家としての先輩、そして師でした。  山田さんとの思い出はたくさんあり、そのことばにさまざまな影響を受けたひとりですが、…

デヴィッド・リンチと「希望の国」

美術関連

「デヴィッド・リンチ」展を園子温の「希望の国」と対比的に見る。   デヴィッド・リンチはおもしろい。とにかくかっこいい。今回の展示ではドローイングがとくによかったと思う。大作のペインティングもいくつかあって、これらはオルセー美術館の「CRIME & CHATIMENT」(*注1参照)展の最後の部屋にあったリンチの作品「Do you want to know what I really think ?」というジーンズを貼付けた作品から続いている一連の作品と思っ…

アートのなかの“生きもの”は亡霊?

美術関連

アートのなかの“生きもの”はすべて亡霊です。それは以前から感じていたことですが、その思いを強く持ったのは、先日神戸の六甲山に「六甲ミーツ・アート 2012」を見に行った時でした。 木村幸恵の“クリスタル・オーガン”(*写真参照①) はオルゴール館での展示でしたが、透明素材を使った作品は小さな一室の古い家具(オルゴール)に囲まれて出現した亡霊、あるいは幽霊のように感じられました。それが“もの”なのに、まるで生きているかのように出現していることに新鮮な驚きをもち、いままで見てき…

「コノ チョウノ ナマエ オシエテ・・・サイキック(Psychic)とプシュケー(Psyche)」

美術関連

「コノ チョウノ ナマエ オシエテ・・・サイキック(Psychic)とプシュケー(Psyche)」 この蝶は今年の夏前に庭の木に止まっていました。(図1)  まだ朝も早く、じっとして動かなかったので羽化したてのように見えました。羽が顔のように見え、それがこちらを見て“描いて”と言っているような気がしたので思わずカメラを持ち出し写真を撮り、プリントアウトしてからペンでその姿を追いました。そうして出来上がったところにヴェラスケスの「マルガリータ王女」の顔を鉛筆でかぶせたのです。…

メガミル

美術関連

 見るということが、この世界にあるものを映した私の網膜上の形成だとしたら、絵は“知りえない世界”を結実させた、それが誰かさえわからない者の網膜上の形成物なのかもしれません。(図参照) 前者では、網膜上の刺激が視神経を通して脳につながり、認識が生じるのですが、後者ではそもそも見ている主体がはっきりしないので認識されること、そのものが成立しません。しかしそれは決して超越的なものではなく、いわば無数の生きている眼があるようなものです。  メガミル(眼が見る)*というのはそういうこ…

上海リポートー2012

未分類

 大学の交流で上海に行ってきました。(旅ムサin Shanghai )  上海には強烈なリアリズムがありました。といってもそれは描き方のリアリズム(写実主義)ではなく、社会のなかでアートがいかにして生き抜いていくかというリアリズムのことです。国が政治、経済と同じように文化政策としてアートを推進し、それらと緊張関係をもちながらアートシーンが出来上がっていました。作品が流通して、一部の作家たちはますます制作に邁進し、それを欧米の人たちが見に来てまた作品が流通していく、という循環…

宇佐美圭司さんのこと

日常

 わたしの個展のあいだに宇佐美圭司さんが逝去されました。宇佐美さんはわたしに「ムサビに来ませんか?」と言ってくれた人で、そのときの電話は今でも覚えています。丁寧さと率直な話し振りに、はじめは学生かと思ったものです。  それからの付き合いは、油絵学科での絵の話やBコース(現代美術系)の確立などいろいろあるのですが、わたしが思い出すのは裸の宇佐美さんの姿です。と言っても、それは正確には水着姿のことです。彼は吊るしのジャージーを着て大学に来ました。そして助手の岸本くんやわたしと一…

ギャラリーでの会話

未分類

展示会場にて Tさん:長沢さんの今回の展示を見てスペインであった80代のおばあちゃんのキリスト像修復記事を思い出したのだけどどう思う? ながさわ:あれはよかった。ぼくもあの記事を読んでコンセプトが同じだと感じたよ。絵がおもしろいし、“いま”を肯定しきるところがすばらしいと思った。 Tさん:過去のものを壊してまで?あれはもうもとに戻らないよね。 ながさわ:過去のいいものを保存するのはもちろん大切だけど、それが“いま”に生かされなかったらなんにもならないんじゃないの。 Tさん:…

長沢秀之「PAINTING on Painting」展オープニング

美術関連

ギャラリーモモでの長沢秀之展が始まりました。昨日がそのオープニングだったのですがギャラリーの杉田さんの求めに応じて簡単な作品の説明をしました。油彩は大きく分けて次の3つに分かれること、 ○誰かわからない人が描いた模写作品の上に点をのせたもの ○模写下絵を発注し、その上に点をのせたもの ○自分で描いた作品の上に点をのせたもの そして一見下絵のように見える線画はすべての作品が終わった後に、もとの絵がわかるように描いたものであること、などなどを話しました。(展示コンセプトがブログ…