C通信48. 宇宙人”アセファル” Extraterrestrial beings, ACÉPHALE
宇宙人がやってきた。来襲でも逆襲でもなく、かといって友好というのでもなさそうだ。その意図も不明なまま、ただただやってきた。それはかたちではないので、何か適当な容器に入らなければならなかった。ことばであったり、音であったり、そこらに転がっているちょっととしたものに、まるで憑依するようにすっと入り込み、周囲に気がつかないようにとけ込んでいった。  …
宇宙人がやってきた。来襲でも逆襲でもなく、かといって友好というのでもなさそうだ。その意図も不明なまま、ただただやってきた。それはかたちではないので、何か適当な容器に入らなければならなかった。ことばであったり、音であったり、そこらに転がっているちょっととしたものに、まるで憑依するようにすっと入り込み、周囲に気がつかないようにとけ込んでいった。  …
高レベル放射性廃棄物の行方はまだ決まっていない。地中深くにうめられて10万年後にようやくその放射能がなくなると言っても、そのときここにひとがいるのかどうか、それさえもわからない。 10万年、それはいったい時間なのか?距離なのか?銀河系の端から出た光がもう一方の端まで届くのに約10万年。あるいはホモ・サピエンスがまだネアンデルタール人と共存していた10万年前の過去。そんな時間をひとはほんとうに思い描くことができるのか。 はるかそのときには、核開発自体が人類の最大の失敗として記…
そこは半島の突端のようなところだった。崖と浜に挟まれた下り坂の道を進んでいくと上り坂になって町に入るようになっている。ぼくと宇佐美さんはいまスクーターに乗って突端にある町の城塞をめざしているのだ。なぜかというと、その城塞から何人ものひとが空中に浮かび、空のほうに吸い込まれていくのが見えたからだ。ぼくはすでに坂を降りて上り坂にさしかかっていたが、宇佐美さんはまだ下り坂をおりていない。だからぼくの前には宇佐美さんの姿は見えないが、夢のなかでは宇佐美さんがスクーターに乗って走る後…
マスクを皮膚化するか、それとも皮膚をマスク化するのか
永い眠り…ほとんど死と変わりないような眠りのあとに、そいつは自分が植物になっていることに気がついた。移動はできないが上は光に向かい、下に熱を感じていた。それは太陽とマグマのことである。植物は、地の表面を移動しながら生きている人間に比べて遥かに宇宙と繋がった存在なのだ。だから移動の必要もなく、宇宙に行くことさえ必要ない。人間はほかの動物よりも地熱から離れてしまったので、自らの熱を“文化”という名で起こさざるを得なかった。その発展とともに快適な生活を目指し、究極的には原子力発…
ようやくそれを登り切ると、目の前には波?…さかさの波のようなものが現われた。 股のぞきをしてみると、たしかにそれは浜に打ち寄せる波だった。 波はくだけ散りながら、さまざまなひとの顔を散らし放った。それらはしぶきから生まれでてくるようにも見えるのだが、じっと見るまもなくすぐに消えてなくなった。これが延々と繰り返された。
いつのまにかオレひとりになっていた。天井を這って進んだ友人はもういない。そうしてまたもやひとウサギのあのこたつにたどりつく。そのひとりが手招きをしてこたつに入るように誘った。そこに足を入れた途端、からだがくるりと宙返りして頭からこたつのなかに入ってしまった。 こたつのなかには黒々とした死の山がそびえ立っていた。一艘の小さな舟でその波止場のような所に着くと、上へと延びる階段があり、オレはそこを登った。おかしなことにその階段は登っているのに、落ちていくような、あるいは下がってい…
カタカタと機械音がした。もう一度その夢の光景を追おうと眼をつむると、真夜中のがらんとした一室で眠っている自分がいた。その自分が見ているのか、その部屋の窓で起こっていることなのかはっきりしないが、猿たちが音もなく左から右のほうへよぎっていくのが見えた。それはシルエットだけだったから、実際の猿なのか、投影されたものなのか、わからないが、その一瞬の動きが脳に焼き付いたのはたしかだった。 もしかすると向こうにいる猿が自分で、こちらにいるのはその抜け殻かもしれない。
そこにはひっくり返った映画撮影用のカメラがあり、その部分からさらさらした血の砂がこぼれ落ちていた。