1000年あとの記憶(遠い惑星からの手紙)

 

 宇宙船「オリヅル」号はいま中継の惑星に到着し、異星人の出迎えを受けています。母船には人間数名と多数のアンドロイドが乗船していましたが、人間はすべて発狂してしまいました。そのなかでも日本人乗組員は発狂するのが遅く、植物的な体質だとか、順応しやすいのが原因とか言われましたが、最終的には他に遅れること数年で、やはり発狂してしまいました。

 

 もっともこれは予定通りのことだったようです。この場合の“人間”も“発狂”も地球上の基準だったのです。地球上では人間の脳は10%(*註)しか使われておらず、ヒトのDNAの97%は意味のない塩基反復で何の役にもたたないとされてきましたが、乗船の人間たちは両者とも著しい変化を起こし、同時、もしくはその結果として“発狂”を得ました。アンドロイドにはこの変化は出ていません。肉体をもっているかどうかが分かれ目だったようですが、アンドロイドも最近は進化して、高度の“肉体”をもつようになっているので、詳しいことは今後の分析を待たなければなりません。ただ後者の“肉体”には誤差や誤作動がないのが特徴で、これがどうも影響しているようなのです。

 発狂は異星人とのコミュニケーションに役に立ちました。

 アンドロイドは人間とのコミュニケーションには長けていて、異星人とのコミュニケーションでも、そこで培った膨大なデータベースを利用しましたが、それらがことごとく失敗に終わったのと対照的でした。

(註:この10%説にはいろいろあるが、現在のところ「ルーシー」などの映画以外では採用されていない。しかし100%のうち、どのくらいが使われているかは依然不明である。全部を使っていたら、補給するエネルギーもとてももたなかったとする進化上の問題もあるが、あくまでもこれは地球上でのことである)