新しい年になったけど、べつにおめでとうというほどのことでもない。それでも卯年になったからウサギだ
オレたちは空っぽの倉庫に行き着いた。 旧日本軍が南西諸島や南方防衛のための弾薬を保管していた倉庫だったが、終戦の武装解除のときに大量の弾薬がここから運び出されて廃棄され、今は空っぽになっている。内部は網の目に組まれた鉄骨が分厚いコンクリートで固められ、壁が二重構造なので外部から入るとひんやりする。 誰もいない監獄のようなところだが、人社会と隔絶しているゆえに妙に落ち着く。ぼーっと奥のほうを見ていると、突然黒いかたまりのようなものが現われて視界を塞がれた。それはかつて夜の山のなかで出会ったアマミノクロウサギだった。黒々した体ながら、光を透過してオレたちの前に立ち止まり、こちらをじっと見ていた。