C通信 121: 記憶の島

ソイツとオレは人の波のなかにいた。たどりついたところは、うっそうとした森のようではあるがその存在さえ疑われるようなぼんやりした島だった。人(死者)たちがバラバラのボディーを動かそうとすると、そこにぼーっとかすかなイメージが生じ、そして消えていった。それは写真や画像のようなイメージではないが、身体の痛みの部位を示す信号のようなもので、それぞれの動きに応じて明滅した。

C通信 120: ネクロポリからひとウサギの部屋へ

  オレたちはネクロポリを経て、またひとウサギの部屋にたどりついた。いや、たどりついたのではなく離れようとしていたのかもしれない。だからひとウサギはもう何もことばを発することもなく、しずかにこたつに入っていた。 オレとソイツは死ねなかったのか?それともボディーを得てほんとうに死者になることができたのか?それはわからない。たしかなことはオレたちが石と話ができるようになったことだ。脳を捨て、バラバラになった身体を石や植物や動物に投げ出した。 アセファル宇宙人は石化の練習に明け暮…

C通信 119-3 アセファルとは?かたち、ホモ属について

アセファルにはかたちがない。アセファル星は地球にんげん人とは違った“科学”をもち、それをもとにした高度の文明の発達によってかたちを失ったという。「あらゆる文明は発達の果てにかたちを失う」というのがアセファル惑星が最終的に得た結論で、これはC通信101でアセファル宇宙人が語っていることでもある。 アセファルは自らの星を離れ、地球に来てから石になることを決意する。アセファルの世界は地球で言うミクロの世界のようなもので、直接には見えないが粒子の波がたえず動いていて、地球上のマクロ…

C通信 119-2 植物になったひとは・・・(C53参照)

植物になったひとは火星に移住した。正確に言えば、火星で植物になることができた、ということだ。 地球上では目を無効にするために植物になったが、火星ではそもそも生物がいないので捕食者、被捕食者の区別がなく、したがって目も必要とはされなかったという火星特有の事情がここで植物になることを促進した。生物どうしの争いは一切なく、その生は管理され、その頂点に管理監視としての“目”があった。かつての地球人は自らの目を廃棄し、脳を植物の根に移植することで植物人間になることができた。

C通信 119: すべての死者は石の声を聞き・・・

死者と石は平等である。すべての死者は石の声を聞き、植物の声を聞き、生物、無生物の分け隔てなくその声を聞くことができる。石の表面に現われた徴は、それを見るものへのメッセージであり、投げられたうたでもある。植物の緑のきらめきもまたしかり。これらはかすかではあるが、はっきりとしたその声なのだ。 死者はまた、時間を遡り、あるいは時間を進んでその日、そのときの幽霊に会う。 幽霊は時間をさまよっているので、死者はそれぞれに石を渡す。そうして幽霊は記憶を石に託す。 もっともめざましいのは…

C通信: 118: 死者と石

「はっきりしたのは、COVID-19ウイルスが人間がつくってきたこれまでの文明をはっきり否定したことなんだ」

C通信 116: 虐殺 Genocide

アセファル「にんげん人は敗北したんだ。脳が肥大化し、さらにそれを世界につなげようとした。その最先端のスーパーコンピューターだって結局計算とその早さを競って開発しているだけじゃないか。その果てに生成AIをつくって、ますます脳の支配を強めようとしている。そこにはボディーがない。いや、だからボディーがなくなったんだ。見てみな・・・スイッチボタンひとつで大量虐殺を平気で実行しちゃうんだ。 死んでいくにんげん人たちは、ずたずたにされた肉体でそういうにんげん人に抗議しているんだよ」

C通信115: 虐殺 Massacre

C通信

ターゲットにピントを合わせて爆破する空撮映像。まるでゲームのように。しかしまぎれもなくそこには攻撃する人間がいて、その人間がターゲットを爆撃して虐殺を引き起こしている。虐殺された歴史を抱えるものが逆に虐殺をする。  

C通信 114: 暴力

サッカーワールドカップカタール開催までに、過酷な労働で6千人もの死者があったことは忘れてはならない。スポーツへの熱狂とカタール政府への批判は両立する。そのうえで2つのできごとが蘇る。 クロアチアのタフな戦いぶりが印象的だった。ユラノヴィッチ。日本がクロアチアに負けて前田が泣いていたときに、同じセルティックでプレイするユラノヴィッチが彼のもとに来て頭にキスをして声をかけた。「同じチームメイトであることを誇りに思う」と言ったそうだ。泣いてる前田に慰めの言葉をかける様子は世界中に…