4月から「アート コミュニケーション」という授業を持つことになった。学生が自分の作品を英語で語る、または来日アーティストの英語でのプレゼンテーションを聞いて話し合う、というものである。これにはムサビが採択された「グローバル人材育成事業」と「KAKEHASHI project」が絡んでいる。その詳しい説明と、なぜ今英語なのかという出発点での問題はここでは省略する。

 この授業の第二回目(5月22日)のGuest Lecturer「Tamiko O’Brien」のことから話を進めたい。Tamiko O’BrienさんはMark Dunhill さんとのコラボレーションで彫刻作品をつくっていて、そのユニットの名がDunhill and O’Brien, 1998年からロンドンで活動を開始している。世界各地での作品制作と発表があるが日本では遊工房のアーティスト・イン・レジデンスに滞在してつくった「ROCK」が知られている。ROCK2

 これはイサム・ノグチの「Thunder Rock」という15トンもの花崗岩作品をもとにしているのだが、その作品が落ち着き場所を求めて3回も太平洋を旅したことなどから着想を得て、彼女らはその形を模して持ち運びできるような軽い素材のものとして「ROCK」という作品をつくったという。写真はその作品を設置するために運んでいるところだがどことなくユーモラスな光景である。重力という重いシリアスな問題を軽い問題に展開している。そこにユーモアの感覚が生まれるのだろう。と同時にイサム・ノグチへのリスペクトとアイロニーが入り混じっている作品でもある。

 その他の作品でも重力を無視して新たな意味を獲得しているものや、例えば「THE USEFUL BENCH」や「JAPANESE OBJECT 1」のように個人が恣意的に作品をつくるのではない方向性を持った作品、いわば自分の関わりを最小にして他の力や偶然性に作品をゆだねる作品制作の考えが印象に残った。ある意味ではばかばかしいと思えることやナンセンスなことを堂々とやっているところがおもしろい。

 しかも彼女はCity & Guilds of London Art Schoolの次期校長である。そしてこういう経歴の人が日本のアーティスト・イン・レジデンスに一ヶ月近く滞在して制作しているのもすごいことだなと思う。レジデンス滞在がアーティストのキャリアになるということもあるだろうが、日本ではあり得ない話である。

 今回は村田さん夫妻が主宰する「遊工房」を通してのレクチャー依頼ということもあり彼女は気安くこちらの求めに応じてくれた(聞き取りやすい英語でユーモア、身振りたっぷりのトーク)。

 スタートとあってすべて英語でのやり取りとはいかなかったが、何人もの学生が英語でポイントをついたいい質問をした。作品や作家への興味から出る質問こそが作者の重要な考えを引き出すものだ。制作をしている自分たちの問題としてコミュニケーションをはかる、そういう意味ではいい話し合いが成立したと思う。