カプセル状の物体に包まれたミイラは、短いスパンの時代のなかでは「古代文化の遺産」とされたが、千年万年という時間のなかでは、地球から出発して再び帰還した宇宙飛行士のミイラであることが定説となった。23で触れた宇宙船「オリヅル号」の乗組員であることがわかったのも、巻いてあった布に付着していたDNAの分析からだった。この時代はまだ宇宙飛行士は肉体を持っていたのである。だから死が厳然としてあり、ミイラになることもできた。それから数千年も経った時代の飛行士は肉体がなかったからミイラにはなれず消滅するしかなかった。

その意味でもこのミイラは貴重な死の証明とされた。

 

 

 ラスコーの洞窟壁画は保存のためにその精巧なレプリカがつくられた。20世紀につくられたLascauxⅡをはじめとして、そのあとLascauxⅢ、LascauxⅣ、LascauxⅤなどがそれにあたる。しばらくするうちに元の壁画の一部に変化が現われた。洞窟の最も深いところの縦穴を降りたところに「井戸状の空間」があり、ここには野牛とヒトとケサイが描かれていた。野牛には槍が刺さり、そこからはらわたがはみ出している。鳥の彫り物をした棒、卒倒するヒト(祈祷師)もいる。このうちケサイだけは他と描かれ方が違い、描かれた年代も違うことがわかっていたが、この部分がはがれ落ちてうすくなり、ロケットのような図形が現われてきた。もともと謎を呼ぶ絵であったが、このロケット状の図形の出現は多くの科学者を混乱させた。

 いたずら説も含めて、いつだれが描いたのか、が問題となった。ケサイが描かれる以前に描かれたとしたら古代にロケットがある文明が存在していたことになる。あるいは見ただけなのかもしれない。ケサイのような野獣が消え去り、宇宙に飛び立つロケットが出現することがなにか別のことを暗示しているようにも思われる。右側の野牛のはらわたとは対比的に、これらは人間が肥大させてきた脳による文化の象徴とも受け取れた。

ともかくも宇宙に旅立ったヒトがミイラとして地球に戻り、その地球の洞窟の壁面には、肉体を持った動物の死とそこから出発する姿が残った。