C通信62. 一休さんと<遠近法 vs 縮地法>
ロシアの詐欺師の、目に止まらぬ手さばきの一瞬は、死んだ原発事故処理作業員が入れられた鉛の棺の10万年に匹敵する。計測可能な時間は個人にあっては何の不都合もなく伸縮し、その一瞬にこそ永遠が宿るのだ。 &nb…
ロシアの詐欺師の、目に止まらぬ手さばきの一瞬は、死んだ原発事故処理作業員が入れられた鉛の棺の10万年に匹敵する。計測可能な時間は個人にあっては何の不都合もなく伸縮し、その一瞬にこそ永遠が宿るのだ。 &nb…
オレたちが零下40度もあるひとウサギの部屋に到達したのは2020年の4月のことであった(C通信11.回廊)それからあっという間に時間が過ぎ去り、すべてのひとが老いた。 ひとウサギのことば「ここは死者のこたつです。オマエらはここには入れない。なぜならばボディーを持っていないからだ。早く出て行け!」はまだ解けない。 植物だけがアンテナを張って成長し、不死の街は静まり返っている。 思考は高速よりも早い。現実にはありえない光年のかなたに、老いた者がたどりつくことがある。加えてその者…
証言F 「宇宙船オリヅル号の開発には日本人技術者の力によるところがおおきい。オリヅルはもともと2次元だから。それが惑星間飛行をして、目的地に着いたら3次元になるんだ。宇宙船の内部空間もこたつを利用して折り畳まれている。Kotatsuスペースというんだけれど、普段は2次元ながらスイッチひとつでか作戦や会議室にも居住空間にもなる。Chabudaiスペースというのもあってこれは主に食事と団らん用だね。もちろん生身の人間なんていないよ。人間は地球にいて宇宙船と全く同じスペース、こた…
証言E 「1万5千年前に描かれたラスコーの最深部の壁画にロケットの絵が付け加えられたが、現物は残っていない.しかし壁画表面を裏側から見るとこのような姿になる。裏側には表では見えない世界が広がっていて、そこでは過去も未来も、現在を中心とする同心円上に存在する。だからこれは今から1万5千年後に地球を去るひとたちが乗ったロケットの光景なんだ。」 ラスコー「井戸状の空間」を壁の向こう側から見た図(C通信27から) 証言D 「ラスコーの洞窟絵は保存のためにレプリカがいくつもつくられて…
植物になったひと:証言C 「たしかに目はないわ。世界は波動なのよ.その振動を感じられれば問題ないの。植物体全体で感じることができるから感覚がフラットなのよ。垂直に立っているけど感覚はフラットなのよ。動物にとって目が重要なのはわかるわ。その世界は捕食の連鎖だからね。どうしても目を中心としたからだになるし、捕食のためには動かなければならない。恐竜を見てごらんなさいよ。エネルギーの使い過ぎよ。それでも1億8千万年も生きた。それはこの惑星の資源を加工しなかったからよ。ひとは加工して…
不死になったひと: 証言A「たしかにおれは不死を手に入れたけど、こんなことはやるもんじゃないね。知っている友人やひと、まわりやものが全く違っているのだから、そのなかで生きるなんて拷問に近いよ。死の恐怖を逃れていつまでも生きられるなんて、なんて幸せなことだとみんなが思ってたけど、こんなつらいことはない。少なくともおれは後悔している。もう今さら言ってもなんにもならないけど…。せめてもうひとつの選択肢であった植物になることのほうがよかった。不死にはふたつの方法があり、ひとつはおれ…
彼の名前はミハイル・フルジャノフスキーといった。なぜこのローマに来たのか、聞くとそのいきさつには1986年のチェルノブイリ原発の爆発事故が絡んでいることがわかってきた。彼はその当時40歳で原発労働者の街プリピャチで小さな家具職人をしていたが、当時仲のよかった友人が事故処理作業者(リクビダートル)となってぼろぼろに働き死んでいったことを目の当たりにした。国の危機を救うという使命感もあったのだろうが、多くの作業者がその危険をよく知らされずに作業にあたり、そ…
銀河系ができたのが136億年前、太陽や地球は46億年前。バクテリアがそこに生まれたのが20億年前。その時間に比べれば生物の生と死のくりかえしはほんの最近のできごとにすぎない。数百万年に及ぶデボン紀の“波打ち際”での生物の死があり、陸に上がる生物たちのあるものは海に引き返し、あるものは陸に上がった。ラスコーの祈祷師はまだ人間ではなく、その死さえもない。死ははらわたを出した野牛のほうにあった。人間が死ぬようになったのはそれからのことである。 2000年、ローマ在住のロシア人詐欺…
多くの人間が植物として生きることになった。 それは、頭をもたないアセファール宇宙人(C通信.47)への対抗から発生したものだった。“かたち”がなく、見かけは“ご当地キャラクター”に見える宇宙人から身を守るには、こちらもかたちを失うしかなく、まず視覚を失うことでその第一歩を踏み出した。しかし、かたちを失うことはそう簡単にできることではない。ひとつの過程として植物人間になることを選んだ。 もうひとつの理由は、不死を生きるためであった。正確に言えば不死ではなく、死ねない時代を生き…
宇宙人アセファールはかたちをもたない。感情も持たない。記憶ももたない。そして変化する。つまり地球人と交信不可能だ。一応着ぐるみのなかにいて外見上のかたちは保っているが中身のほんとうの姿はわからない。ところがそれは確実に変化する。そのように見せるところがアセファールの最大の能力なのかもしれない。地球人はそれを見て変化ととらえる。変化とは、あるかたちが変化し、はじめのAという文脈がBという文脈に変わることでそこに意味を見つけるからだ。ところがアセファールに意味はない。もともと交…