C通信51. Ghosts in the forest
森の木々は囁きあっていた。その夜、木々が見た夢のこと、白い幽霊のような者が森の中をさまよっていることを…*C通信総覧はこちらから⇒ http://nagasawahideyuki.net/news/2825.html
森の木々は囁きあっていた。その夜、木々が見た夢のこと、白い幽霊のような者が森の中をさまよっていることを…*C通信総覧はこちらから⇒ http://nagasawahideyuki.net/news/2825.html
宇宙人アセファールはかたちをもたない。感情も持たない。記憶ももたない。そして変化する。つまり地球人と交信不可能だ。一応着ぐるみのなかにいて外見上のかたちは保っているが中身のほんとうの姿はわからない。ところがそれは確実に変化する。そのように見せるところがアセファールの最大の能力なのかもしれない。地球人はそれを見て変化ととらえる。変化とは、あるかたちが変化し、はじめのAという文脈がBという文脈に変わることでそこに意味を見つけるからだ。ところがアセファールに意味はない。もともと交…
『ほんとうの過去というものは未来のなかにしかありません。それはうしろではなくまえにあるのです。ですから「記憶にない」ということばは「記憶がない」という病理でもなく、ただ過去を目前に蘇らせたくないだけのことで、つまりは自分の未来を否定し、いまの生を否定していることになるのです。未来とは何でしょうか?たとえば、あなたがカメラを見て微笑んだときのそのまなざし、そのまなざしはたしかに未来の誰かに向けられているのです。はるかなそのとき、あなたは死者としてその誰かの前に現われることでし…
私は不死の世界から戻れない。あたりにはパウダー状の乾いた血が絶えず流れている。殺戮が始まった。 アセファールはかたちをもたない。感情も持たない。記憶ももたない。そして変化する。つまり地球人と交信不可能だ。一応着ぐるみのなかにいて外見上のかたちは保っているが中身のほんとうの姿はわからない。ところがそれは確実に変化する。そのように見せるところがアセファールの最大の能力なのかもしれない。地球人はそれを見て変化ととらえる。変化とは、あるかたちが変化し、はじめのAという文脈がBという…
宇宙人がやってきた。来襲でも逆襲でもなく、かといって友好というのでもなさそうだ。その意図も不明なまま、ただただやってきた。それはかたちではないので、何か適当な容器に入らなければならなかった。ことばであったり、音であったり、そこらに転がっているちょっととしたものに、まるで憑依するようにすっと入り込み、周囲に気がつかないようにとけ込んでいった。  …
高レベル放射性廃棄物の行方はまだ決まっていない。地中深くにうめられて10万年後にようやくその放射能がなくなると言っても、そのときここにひとがいるのかどうか、それさえもわからない。 10万年、それはいったい時間なのか?距離なのか?銀河系の端から出た光がもう一方の端まで届くのに約10万年。あるいはホモ・サピエンスがまだネアンデルタール人と共存していた10万年前の過去。そんな時間をひとはほんとうに思い描くことができるのか。 はるかそのときには、核開発自体が人類の最大の失敗として記…
そこは半島の突端のようなところだった。崖と浜に挟まれた下り坂の道を進んでいくと上り坂になって町に入るようになっている。ぼくと宇佐美さんはいまスクーターに乗って突端にある町の城塞をめざしているのだ。なぜかというと、その城塞から何人ものひとが空中に浮かび、空のほうに吸い込まれていくのが見えたからだ。ぼくはすでに坂を降りて上り坂にさしかかっていたが、宇佐美さんはまだ下り坂をおりていない。だからぼくの前には宇佐美さんの姿は見えないが、夢のなかでは宇佐美さんがスクーターに乗って走る後…
マスクを皮膚化するか、それとも皮膚をマスク化するのか
コロナ禍のなかでは時間が倍速で飛んでいく。10月に入ってようやく車で横浜に行き、ヨコトリを見ることができた。今年はビデオ作品が充実していた。パク・チャンキョンの「遅れてきた菩薩」、アントン・ヴィドクルの「宇宙市民」などが強く印象に残った。前者では白黒反転の長編動画というのが思いのほか鮮烈で、放射能と菩薩の話にピッタリあっていた。後者に関してはフョードロフのロシア宇宙主義というものがあることさえ知らなかったが、「これが宇宙である」と新作の「宇宙市民」を見るうちに、ヴィド…
永い眠り…ほとんど死と変わりないような眠りのあとに、そいつは自分が植物になっていることに気がついた。移動はできないが上は光に向かい、下に熱を感じていた。それは太陽とマグマのことである。植物は、地の表面を移動しながら生きている人間に比べて遥かに宇宙と繋がった存在なのだ。だから移動の必要もなく、宇宙に行くことさえ必要ない。人間はほかの動物よりも地熱から離れてしまったので、自らの熱を“文化”という名で起こさざるを得なかった。その発展とともに快適な生活を目指し、究極的には原子力発…