C通信 89: 死者の町 ネクロポリ

C通信 89: 死者の町 ネクロポリ

第二章 死者の町 ネクロポリ Necropoli

 ネクロポリは小高い丘の上にあり、あたりはしーんと静まり返っていた。

 何もない空間に道が浮かんでいて、それをたどっていくとネクロポリの入り口に着くようになっている。ウサギの前を、無言の死者たちがうねるような列をつくって町のなかへと入っていった。西のかなたにあるこのネクロポリは圧倒的に戦争の犠牲者が多い。戦争とは公の殺しあいである。だからその死者たちは、殺したほうも殺されたほうもその理由を知りたがっていた。生者の戦争の論理はここでは通用しない。死者はあらためてその理由を町で見つけなければならなかった。ボディーがない人があまりにも多く、ウサギはその人らに声はかけず、逆にそのつぶやきやうめき声に耳をそばだてるしかなかった。

 ウサギはやがて黒いふさふさした一組のひとのような存在に変わっていった。体の大きいふさふさのほうに、小さいほうが肩車で乗っかっているような感じだった。