1774年、小田野直武は「解体新書」の木版付図の下絵を描く。秋田蘭画の代表作「不忍池図」で知られるあの直武である。「解体新書」は原著の「Anatomiche Tabellen」(解剖図表の意)を杉田玄白、前野良沢らが翻訳したものであるが、俗称で「ターヘル・アナトミア」と呼ばれた。
平賀源内の意を受けて、直武はこの解剖図の写しをやることになったが、もともとは銅版画による図譜である。それを彼は面相筆で丹念に写し取って木版の下絵をつくった。ひとつひとつの線や図に、今まで知らなかった世界を覗き込んでいる直武の驚きがあり、西洋の線とは違ったおもむきが感じられる。
若くして逝った直武に敬意を払いつつ、腸胃篇圖にある解剖図をドローイングした(下図)