C通信28.- 肺の街 PNEUMOTROPOLIS

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万年あとの記憶 LUNG CITY 肺の街に着く。この一帯はあらゆる人工臓器をつくる街が広がっているが、この肺の街はそのなかでも最も重要なものだ。    肺の前身はエラであった。生物が海から出て陸地で暮らすようになるには、エラと原子肺を持った生物の数百万年にも及ぶ波打ち際での試行があり、その過程で多くの生命も失われた。あるものはそうしたなかで陸地で生きることに適応し始め、あるものはまた海に帰っていった。やがて陸で生きるようになった生物はエ…

C通信27.- ラスコーのはらわた A trail of entrails in Lascaux

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今から1万7千年も前のこと、ラスコーの洞窟壁画を描いた人たちは未来のことを想像しただろうか?人間が手術によって腸(はらわた)をさらけ出される目にあったり、またひとが自らのからだを自ら停止させてしまうことを思い描いただろうか? 否…けれども生とともに死は身近にあった。 「井戸状の空間」に展開された「絵」は過去の図であるとともに、どこか遠い宇宙の惑星の光景のようにも見える。時間はループする。野獣に襲われるグラディエーターの図が、現代のコロナウイルスによって襲われる貧困層のひとび…

C通信26.-イノシシ Wild boar

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…ところで今は前夜だ。流れ入るすべての生気と真の情愛を受け入れよう。あけぼのとともに、おれたちは、燃え上がる忍耐で武装して、輝く町へ入ってゆくだろう…A・ランボー「地獄の季節」から

C通信25.-からだを失う Lost body

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 そうしておれたちはいつしか次元を超えて別の世界にたどりつく。オリヅルが2次元と3次元を行き来するように、人間は折り畳まれて3次元世界から多次元世界に行ってもとどおりになる。いやもとどおりにはならないだろう。不自由なからだはそこから新たなからだを見つけ出す。 マイヨールの死を知らせてくれたTはこう語る。「水槽(湯船)に頭を突っ込まされるんです…彼女はつぶやきながらぼくの頭を強い力で押え続ける。ものすごく苦しいところまでいって、ようやく手を離してくれる。そのとたん、ぼくはぷわ…

C通信24.- File No.22 12 2001 Death of Jacques Mayol

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ジャック・マイヨールが死んだのは2001年の12月22日のことである。当時ローマに住んでいた私のところに、日本の友人のTから電話がかかってきて、マイヨールが自宅で首を吊って死んだと知らせてくれた。予想せぬできごとに驚き、ショックを受けた。素潜りの世界を少しでも知っている人なら、誰しも「あのマイヨールがどうして?」とつぶやいてしまうくらい、にわかには信じがたい事件だった。 彼は生と死の境界線すれすれにいた人だった。深さ60mもの無呼吸潜水自体が想像を絶するが、1976年には…

C通信23.-遠い惑星からの手紙 Letter from a distant planet 

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1000年あとの記憶(遠い惑星からの手紙) 宇宙船「オリヅル」号はいま中継の惑星に到着し、異星人の出迎えを受けています。母船には人間数名と多数のアンドロイドが乗船していましたが、人間はすべて発狂してしまいました。そのなかでも日本人乗組員は発狂するのが遅く、植物的な体質だとか、順応しやすいのが原因とか言われましたが、最終的には他に遅れること数年で、やはり発狂してしまいました。 もっともこれは予定通りのことだったようです。この場合の“人間”も“発狂”も地球上の基準だったのです。…

C通信22.- Android, Cyborg, Human

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Android                                                                                                                       HumanHuman                                                                         CyborgHumanMemoryReplicant

C通信21.-File No.22 07 2011 03:36

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書きものの束。おれはそのなかのひとつを引き抜いた。そのおもてには22 07 2011 03:36という数字が刻印され、そこに次のようなことが書かれていた。 母が死んだ。2011年7月22日の午前3時36分だった。 前日の21日午前中に転院先のO医師から「すぐ来て欲しい」という電話があった。C市のクリニックに到着すると、もう妹夫婦はそこに着いていた。パーキンソン病で地元のA病院に入院したのを皮切りに、さらに特殊疾患病棟のある隣町のB病院に転院。そしてここは3つ目にたどりついた…

C通信20.-塔 Tower

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 都市はまるで墓のようだ。 おれたちはそこをさまよい歩いた。何日か歩いたすえに町をはずれ、塔のようなものがいくつも建っている場所に行き着いた。そのひとつの塔のそばまでやってくると、それが紙の束を積み重ねた山のようなものであることがわかった。本のような、あるいは薄い紙の束のようなものまでさまざまなかたちであるが、その特徴は紙におびただしい文字が書き込まれていることだった。目の前には「2011」という時間の塔があった。

C通信19.ウィルス Virus

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****ウィルスは、必ずなにか生物の細胞に感染しないと増殖しないので、普通は生命にいれません。最近の研究から、ウィルスの起原がわかってきました。ウィルスもその昔は生物でした。ある種の生物が他の生物細胞に感染して増殖しているうちに細胞のなかでないと増殖しなくなってウィルスになったのです。つまり、ウィルスは元は生命ですが、ウィルスになってしまったモノは生命とは考えない方が良いと思います。—山岸明彦(東京薬科大学生命科学部教授(分子生命科学科極限環境生物学研究室)による葛飾区博物…