C通信40.-夢のなかの夢(死者)Dream of the dreamer of the dreamed

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カタカタと機械音がした。もう一度その夢の光景を追おうと眼をつむると、真夜中のがらんとした一室で眠っている自分がいた。その自分が見ているのか、その部屋の窓で起こっていることなのかはっきりしないが、猿たちが音もなく左から右のほうへよぎっていくのが見えた。それはシルエットだけだったから、実際の猿なのか、投影されたものなのか、わからないが、その一瞬の動きが脳に焼き付いたのはたしかだった。 もしかすると向こうにいる猿が自分で、こちらにいるのはその抜け殻かもしれない。

C通信38.- 目のなかの津波 TSUNAMI in the eye of the DEAD

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最後に見たもの、死者の目のなかにある風景。見ているものでもなく、記憶でもなく…それは、“とき”を刻んで止まった時計のように目のなかに刻まれる。なぜならからだがあるからだ。死者はからだで風景をつくる。 「夫は毛布を持ち上げました。すると、うなずきながら担当者の男の人に何か言いました。それを見たとき、わたしは思ったんです。なんのためにうなずいているの?うなずかないで。お願いだからうなづかないで。近づかないように言われていましたが、わたしはすぐに駆け寄りました。千聖がそこにいまし…

C通信37.- 記憶の層 Future collage of past occurrence

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できごとの層はときに偶然、上書きされて今に届く。過去の写真が水害でよごれ、消えかけながらここにあるように。それは人間だけのものではない地の記憶でもある。記憶の層は人を巻き込みながら地の記憶を呼び覚まし、眼の前に現れる。記憶はうしろではなくまえにあらわれる。  

C通信36.- 走る Run

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  おれたちはキートンのように走りまくった。空気を体に感じるために、ひたすら走った。そうすると目の前に過去が現われ、後ろに未来が遠ざかっていった。 ドローイング(キートンの「セブン・チャンス」から) 動物は管を横にして(地と平行にして)走る。獲物を捕るために。植物は管を垂直にして太陽と地球を結び、光合成の光を得る。人間の走る行為は、そのどちらでもない斜めのベクトルを描く。

C通信35.-垂直 Vertical

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動物と違い、人間の体を貫く管(口から肛門まで)は地に対して垂直である。植物も垂直に延びている。               そしてロケットも垂直に飛び立つ。 これらの垂直は何を目指しているのか?

C通信34.-解剖図 Anatomical drawing

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1774年、小田野直武は「解体新書」の木版付図の下絵を描く。秋田蘭画の代表作「不忍池図」で知られるあの直武である。「解体新書」は原著の「Anatomiche Tabellen」(解剖図表の意)を杉田玄白、前野良沢らが翻訳したものであるが、俗称で「ターヘル・アナトミア」と呼ばれた。 平賀源内の意を受けて、直武はこの解剖図の写しをやることになったが、もともとは銅版画による図譜である。それを彼は面相筆で丹念に写し取って木版の下絵をつくった。ひとつひとつの線や図に、今まで知らなかっ…

C通信33.-ロケット Rocket

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Rocket 2200     2200年に打ち上げられたロケットが17000年前のラスコーの洞窟に描かれていた。 未来とは曖昧な過去のことである。

C通信32.-宇宙飛行士のミイラ、ラスコーのロケット Time capsule astronaut mummies

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カプセル状の物体に包まれたミイラは、短いスパンの時代のなかでは「古代文化の遺産」とされたが、千年万年という時間のなかでは、地球から出発して再び帰還した宇宙飛行士のミイラであることが定説となった。23で触れた宇宙船「オリヅル号」の乗組員であることがわかったのも、巻いてあった布に付着していたDNAの分析からだった。この時代はまだ宇宙飛行士は肉体を持っていたのである。だから死が厳然としてあり、ミイラになることもできた。それから数千年も経った時代の飛行士は肉体がなかったからミイラに…

C通信31.-不死の時代、あるいは死ねない時代 Immortal era

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万年あとの記憶Ⅱ、 多くのひとが永遠の生を夢見た「不死の時代」は到来しなかったが「死ねない時代」はやってきた。「死ねない時代」とは、そもそも死というものが意識されなくなり、自分が死んでいるか生きているのかさえもわからなくなる時代のことである。そして現実にひとは簡単に死ねなくなった。 車の自動運転がスマートシティを呼び寄せ、度重なるウイルス禍の隔離生活でそれは一気にひろまった。テレワーク、監視カメラ、AIによる顔認識、データベースに集められた膨大な個人情報によって私権は制限さ…