「ダブル・インパクト」と「若冲と蕪村」

美術関連

 芸大美術館での「ダブルインパクト」展とサントリー美術館での「若冲と蕪村」展を見ていると、日本の美術教育は大きな錯誤のもとでなされてきたのだという思いを強く感じる。こちらの勉強不足もあろうが「なぜ、こんなにいい作品をもっと早く見せてくれなかったのか?」という疑問が絶え間なく襲ってくるのだ。  前者の展示は芸大所蔵作品とボストン美術館所蔵作品の“ダブルインパクト”によっているから、そのボストン所蔵品は日頃あまり目にすることはない。しかしこの中に日本美術の本当のすごさを持つ作品…

ゴダール「さらば、愛の言葉よ」犬、言葉、そしてここ

日常

 誤読と誤解を引き出す作品はやはりいい作品なのだ。だからひとつの解釈を受け取るように誘導していないこの映画は、つまりどう解釈してもよく、そのような意味でこの作品はこの上なくいい映画なのだと思う。思わずだれかに書きたくなるような、言いたくなるような、今までのゴダールの映画の中でもとりわけわかりやすい映画なのではないかと思う。  それにしてもゴダールがなぜ3Dなのか?という疑問があるにはあった。それが最初のほうのショットで氷解する。「ググるな・・なんとかかんとか」と言うline…

2015、卒、修了制作から

美術関連

 今年も卒業制作・修了制作の季節がやってきた。学内の展示から印象に残った作品のいくつかをとりあげていきたい。とりあげる作品はどうしても絵画が中心となり、展示会場にあったインスタレーションやパフォーマンス、映像などが少なくなってしまうが、それはこの科の主要な現れとして見ていただきたい。ここではいつも絵を描くことをまず基本におきながらそこから多様な展開を模索してきた経緯がある。そして今年は例年以上に絵画のさまざまな可能性を感じることができた年でもあった。  なかでも強く感じたの…