再び山田さんのこと

2013年5月22日

 東京国立近代美術館の中林和雄さんが書いた研究紀要所載の「山田正亮 life and work−制作ノートを中心に」がおもしろい。山田さんの文章は解読しがたく分からないことが多いが、今回は中林さんの紹介と的確な抜粋もあって、山田さんの生のことばが聞こえてくる。ドローイングとともに丹念に読みとられたノートのことばからは“誰も知らなかった画家”の像が浮かびあがってくるようだ。

•「色彩のくりかえしのことは本質あるいは生である」。

•「描くことの本質に屈する・・平らな塗りを重ねること 出発点は無限のマチエール」

•「形体が失はれ 抑制された混合体の色彩が表出・・」「色彩に触れる・・」(いずれもノートからの引用)などなど、生々しい画家の実感がある。

 以前のブログに山田さんのことを書いたが、いっしょに飲んでいたときには話されなかったことばである。当時、山田さんは“感情の表出”を語らなかった。あるいはそれを直接語ろうとせずに包み込んで話したのかもしれない。それは大きな謎だった。わたしは、ストライプの作品には“山田さんの意図しない感情が出ている”ことがおもしろいと思っていたのだが、今回のこのノートで、その謎が少し解けたような気がする。

 絵をつくるにあたって強い感情があった。中林さんも言うように“そこに人間が潜んでいる”のだ。理性的なイメージとは別の、絵に憑かれ、のめり込んでいる人間が垣間見える。

 「山田正亮 life and work : 制作ノートを中心に」のpdf版は以下のURLから

http://www.momat.go.jp/research/kiyo/17/pp.8-33.pdf