C通信97 生成AIによるアセファル宇宙人像

C通信97 生成AIによるアセファル宇宙人像

2023年8月25日

*アセファル宇宙人について:C通信48参照 かたちをもたないであらゆるものに入り込む。着ぐるみのキャラのなかや容器のようなもの、さらにことばや音のなかにも入り込む。

アセファル宇宙人                                         「最近はにんげん人の世界にかたちをもたない“生成AI”が出てきた。こちらもかたちがないからよく間違われるけどちょっと違う。もっと根本的なことで言うと、“あらゆる文明はかたちを失う”というのがアセファールの惑星の結論なんだ。もちろんどの惑星の文明も道具を発明しそれを利用してきたから、それはかたちとして残っている・・・だけど、高度になるにつれてそれを使う主体がなくなってくるんだ。アセファールでもそうだった。はじめは生物としてのかたちがあったにもかかわらず、積極的にそのかたちをなくそうとする方向に動いたんだ。なくすというのはそれ自体の存在が意味なくなるということも含めてだから、そのなかでの大小の差はあるけどね。そういうふうに文明の究極的な姿が現われるとは誰も考えてなかった。この地球でもそれが始まっていて、いたるところでにんげん人はかたちを失う方向で動いているように見えるんだ。Eスポーツや、ゲームの世界、ネット上でのステルス攻撃もそう、いや普段の生活のなかでもにんげん人はそのかたちである体を失いつつある。文明が高度化すると体という矛盾に満ちた存在が面倒くさくなるんだな。脳だけの存在に近づきたくなる。そのほうが計算が効くからね。数値化、計算、アルゴリズムでよりスマートにそれをこなすようになる。その結果ますます体は消えていくんだ。もっともこれは将来、にんげん人たちが地球を離れた他の惑星で暮らしていくための準備なのかもしれない。そこではからだはむしろ邪魔になるから、できるだけ最小の矛盾ないものにしておく必要がある」

着ぐるみのバイトをやっていた死者が言う                              「着ぐるみのなかに入るとたしかに自分がなくなったような感じにとらわれるけど、その感じが世界全体で起きているのかな。生成AIもにんげん人がかたちを失う方向の途上にあると言いたいのね、アセファルは。ワタシの着ぐるみバイト友達は絵描き志望だったけどそのひとはこんなんことを言ってたわ」

絵描き志望                                            「生成AIはそれ自体の意思をもっていないから、あたかも意思をもっているように絵を描いたとしても、もってない事実は残る。そいつには動機がないんだ。どんなに学習して描いたとしても、それは目的をもつけど動機を持たない絵なんだ。その描く線にはためらいがなく迷いも勢いもない。

 それに対して人間はどうしても意思、意図をもってしまい、目や耳の感覚を使い、手を使い、体を使ってそれを実現しようとする。そのときにAIではありえないズレというか誤差を身体が生み出してしまう。計算、目算があったとしてもその通りに進まず、偶然が入り込み、思っても見なかった展開になる。つまり初めにあった意思なり意図は身体の介入によって微妙に変更されつつなしとげられる。考えが覆され思っても見なかったことが頻繁に起こりうる。これが絵の現場で起こっていることで、このようにしてそれまでの概念が更新され、つくる本人にとっても発見があるのだと思う。それを生成AIは0と1の連なりによってものすごいスピードで計算して結果を出すが、基本的にこれは人間の身体が起こすズレと誤差を排除した計算に過ぎず、いかに早く解答を出すかの方向に過ぎない。このさき、生成AIはたぶん人間特有のズレや誤差をも学習してくるだろうが、実行プログラミングに組み込まれた時点でそれは計算となってしまう。ためらいがなく、迷いがないというのはそういうことなんだ」

「たとえば一本の線を描いたとする・・でも途中でそれを消してもう一本の別の線を引く・・先の線は間違いではないがよくないので消した・・消し跡は残る・・あとから引いた線は正解ではないけどよくなったとしよう・・画面には消したのにうっすらと残る線の跡と、後からひいた線があり、この二つが微妙に響きあってドローイングが成立したとする。生成AIにはこれができないし、やろうともしないだろう。もっともそれを受け取る人間のほうだってこの消し跡は汚いから失敗しているとか、この人は描けないひとなんだと受け取る人もいる。何が成立しているのか見えない人は多い」

アセファル宇宙人                                         「だから、問題はこれを受け取る側にあるんだ。生成AIがつくった線なり絵を好む人間もでてくるだろう。人間のもつ曖昧さや微妙さを嫌う人も必ずいる。それよりもむしろ体を失う事態が急激に進行しているから、そのような傾向は自然なのかもしれないな。生成AIの発達と体を失うことはパラレルに進行していくことなんだ。アセファル惑星でも同じことが起こり、一部のものはそうした事態に抵抗して脳第一主義をやめたんだ。脳の延長方向だけのデバイス開発をやめて、身体のすべてのところに意思が存在するという仮説を立てて、さまざまなデバイスの開発に着手した。この時に量子コンピューターが開発されて実用化したんだ。量子コンピューターでは0か1の計算式ではなく0でも1でもない曖昧な量子の振る舞いを利用するからね。でもにんげん人がやっているようにこれを計算する方向には使わずに未完のままにしておいたんだ。しかしそれに耐えられなかった。最速計算ができるものがあるのに、言わば誤作動の池に浸かってそれを使わないと言うんだから。誰かがちょっとでもこの計算の魅力に引き込まれたとき、止めていた堰が切れたんだ。あっという間のできごとさだったね、そうしてアセファールは体を失い、かたちを失ったんだ」

「これはそうだな、にんげん人の世界でたとえれば映画「ミッションインポッシブル」で「エンティティは0か1のソフトウェアではなく、死をおそれる虫か赤ん坊のようだ」とおかしなことを言っていたけど、案外これに近いかもしれない。ビッグデータを学習し、正確さとスピードを備えた生成AIの方向はあくまでも最適公約数をつくるしかなく、曖昧なところは排除される。カオスや誤作動、偶然性はAIはわからない。でも死をおそれる虫か赤ん坊のような存在はカオスや誤作動、偶然性のかたまりだ。なぜなら体があるからさ。これを生成AIに組み込めるのだろうか?もちろん現実の多くの生活、たとえば新薬、新素材の開発やテクノロジー分野でそれは重要になっていることは事実だ。そうした現実の計算可能な分野を超えて生物の最も複雑なソフトウェアをつくろうとしてもねえ・・・そこまでは組み込めない・・・」

絵描き志望                                            「受け取るほうのからだがなくなるというのは言えてるね。それにものをつくる作業は体とともにあるから、体を失ったとなるとつくるほうもこれをつくれない。というかつくっても意味がなくなる。

生成AIにこうした事態を回避する質問をするとどうなるんだろう?<ワタシをコロシナサイ>とか言うのかなあ?それとも<もっと矛盾と混乱のデータをくれえーっ>とか叫んだり、カオスや偶然性のデータを要求してくるのかなあ。破滅のシナリオプンプンだね」